2002年2月28日

IT'S A POPPIN' TIME

IT'S A POPPIN' TIME (イッツ・ア・ポッピン・タイム)
山下達郎
BMG JAPAN (2002-02-14)
売り上げランキング: 25681

山下達郎のRCA/AIR YEARS。3番目に買ってきたのは,IT'S A POPPIN' TIMEです。

CIRCUS TOWN,SPACYに続く3枚目のアルバム IT'S A POPPIN' TIMEは,山下達郎にとっては初のライブ・アルバムとなりました。SPACYのレコーディングに参加した村上"PONTA"秀一を初めとするミュージシャンを中心に,ライブハウスや学園祭でライブ活動を行うようになっていたので,そのバンドの音をアルバムという形で残そうということで,六本木ピットインというライブハウスでライブ録音が行われました。

六本木ピットインには,私も一度だけ,瀬木貴将さんのライブを見に行ったことがあります。奇しくも瀬木さんのライブでも,このIT'S A POPPIN' TIMEの時と同じく,村上"PONTA"秀一がドラムを叩いていました。

六本木ピットインは実際に行ってみると写真などで見るよりも,天井が低く,狭い感じがします。ところが,実際にライブが始まると,「どうしてこんな低い天井なのに,音がうるさくないんだろう」と思ってしまうのです。

また,六本木ピットインというライブハウスは,今も昔もジャズ系のミュージシャンのライブが中心なので,山下達郎のようなミュージシャンのライブはこれが初めてだったそうです。

CIRCUS TOWN,SPACYと2枚のアルバムをリリースしたにも関わらず,売り上げは伸びないし評論家とはケンカするし,という状況の中で,いかに少ない予算で新しいアルバムを作るか。そこで,ライブ録音なら日数もかからないし,ミュージシャンのギャラも少なくてすむという,裏の台所事情によって,このライブアルバムが作られたのだそうです。

ライブアルバムとはいえ,1曲目のSPACE CRUSHと,最後のMARIEはスタジオ録音という不思議な構成のアルバムです。この2曲はいずれも山下達郎の一人多重コーラスが中心となっていて,Melodies以降のアルバムではおなじみの手法ですが,アルバムに収録されたのは,おそらくこの2曲が最初ではないかと思います。

特にMARIEは,アルバムに収録された初の一人アカペラということになります。

さて,そんなIT'S A POPPIN' TIMEのベストテイクといえば,13分18秒という「エスケイプ」でしょう。しかも途中でFOしていますから,本当は何十分演奏していたんでしょう。

さてこの次はGO AHEAD!となるわけですが,なんといつもCDを買っている新星堂LAOX店からRCA/AIR YEARSの在庫が全て消えていました。つまり売り切れ,すごいというか,たまげたというか。というわけで次の入荷を待って続きのレビューを書くことにします。

2002年2月18日

SPACY

SPACY (スペイシー)
SPACY (スペイシー)
posted with amazlet at 08.09.15
山下達郎
BMG JAPAN (2002-02-14)
売り上げランキング: 7522

山下達郎のRCA/AIR YEARS。2番目に買ってきたのは,SPACYです。

CIRCUS TOWNに続く2枚目のソロ・アルバムが,このSPACY。このアルバム以降,山下達郎がプロデュースとアレンジをすべて行っています。前作はアメリカでの録音でしたが,SPACYは国内で制作されました。

国内とはいっても,シュガーベイブというバンドは解散してしまっているので,スタジオ・ミュージシャンを指名してレコーディングが行われました。このミュージシャンたちの顔ぶれをみると,なんともゴージャス!

ドラムの村上"PONTA"秀一と,ベースの細野晴臣を双璧とする第一級のミュージシャン達が顔をそろえています。当のミュージシャン同士は,これが初顔合わせだったという方もいたそうで,そんな緊張感の中でのレコーディングという点ではCIRCUS TOWNと共通していると言えるかもしれません。

ライナーノーツでも触れられていますが,山下達郎はドラム,ベース,ギター,キーボードの4リズムに関しては,全ての音の動きを譜面にこと細かく書いてミュージシャンに渡したのですが,誰一人として言うことを聞いてくれず,結果的には4人のヘッド・アレンジと言ってもいい状態だったそうです。しかし一人一人が一流のアレンジャーでもあるこのリズム・セクションから,アレンジャー山下達郎が思い描いた以上のサウンドが生まれたというところが,SPACYの一番の魅力かもしれません。

SPACYでドラムを叩いているもう一人のミュージシャン,上原"YUKARI"裕は,伊藤銀次率いるココナツバンクを経て,後期のシュガーベイブのメンバーにもなっていました。また,細野氏の他にもう一人ベースを弾いている田中章弘は,ナイアガラのレコーディング・セッションに参加しており,言ってみれば両者とも気心の知れた仲間ということです。

この2人の組み合わせは,次のアルバムGO AHEAD!にも引き継がれ,山下達郎のブレイクの最初のきっかけとなったと言われる名曲Bomber!を生み出すことになります。

さてそんなSPACYのベストワンといえば,やはりLOVE SPACEでしょう。なんといってものポンタのドラムがかっこいい!あんな風に流れるようにタムが叩けたらいいなあ。というわけで,ポンタにあこがれる私は,未だにパールのポンタ・モデルのスティックを愛用しているのです。


また,偶然ですが今月のリズム&ドラム・マガジンの表紙は,村上"PONTA"秀一と吉田美奈子でした。


RCA/AIR YEARS,3枚目のIT'S A POPPIN' TIMEは,今月の給料が入ってから買いに行く予定です。

CIRCUS TOWN

CIRCUS TOWN (サーカス・タウン)
山下達郎
BMG JAPAN (2002-02-14)
売り上げランキング: 29449

山下達郎のRCA/AIR YEARS。最初に買ってきたのは,CIRCUS TOWNです。

CIRCUS TOWNは,シュガーベイブ解散後,ソロ・デビューを飾った記念すべきアルバムです。プロデュースとアレンジが山下達郎以外の人間によって行われたというのも,このCIRCUS TOWNだけ。

日本でいくつか曲を作って,それをアメリカのプロデューサー,チャーリー・カレロに渡してアレンジしてもらい,山下達郎が指名したミュージシャンたちが演奏。できあがったオケに吉田美奈子さんが詩をつけて歌入れ,という工程で作られたのがニューヨーク・サイド。(アナログのA面)LAサイド(B面)では,山下達郎自身もギターを演奏しています。

次のSPACY以降のアルバムでは,すべて山下達郎がプロデュースとアレンジを行っています。さらにMelodies以降のアルバムでは,楽器の演奏も山下達郎自身が演奏するパーセンテージが高まり,コーラスも含めて一人多重録音の傾向が強まって行きます。

それに比較して,このCIRCUS TOWN,特にニューヨーク・サイドの4曲は,名うてのプロデューサーが,日本からやってきた見も知らぬ若者から曲を渡されて,独自の解釈でアレンジ。そして一癖も二癖もあるミュージシャン達を指揮してオケを完成させるという,この異なる背景を持つ両者のせめぎ合いから生まれてくるサウンドが,CIRCUS TOWNというアルバムの一番の魅力ではないかと思っています。

そういう意味からも,1曲目のCIRCUS TOWNが,なんといってもベストワンでしょう。イントロの印象的なピッコロのメロディは,チャーリー・カレロが「サーカスならこれだろう」と,「藁の中の七面鳥」という曲のフレーズをはめ込んだということです。「藁の中の七面鳥(Turkey in the Straw)」は,オクラホマ・ミキサーといフォークダンスで踊ったことがある方が多いと思います。最近では,某社のレトルト製品であるところのハッシュド・ビーフのCMで替え歌が使われていましたっけ。しかし私も今回のリマスター盤に書かれた曲目解説を見るまでは,まったく気がつきませんでした。

※今頃気がつきましたが,1996年から始まったこのReviewも,今回でとうとう100個目になりました。100個になったらReviewという偉そうなタイトルも変えようかと思っていましたが,当分このままで続けることにします。

2002年2月15日

RCA/AIR YEARS 1976-1982


 山下達郎の初期のアルバムが,リマスターされて一挙に7組再発売になりました。1976年から1982年まで所属していたレーベルの名前をとって,RCA/AIR YEARSということで,これを記念して当時の曲だけで構成されるツアーが,3月から全国で行われます。

もう15年以上も前の話になりますが,1983年から1986年までの3年間,山下達郎はNHKFMのサウンドストリートという番組で木曜日のDJを担当していました。ちょうどこの時期は,LPからCDへ,そして録音スタジオもアナログからデジタルへと大きく変わっていく変化の時期でもありました。

サウンドストリートのDJを降板した1986年の暮れに発売されたON THE STREET CORNER 2というアカペラ・アルバムでは,LPとCDが同時に発売されました。私の記憶では,LPとCD同時リリースというのは,彼のアルバムとしてはこのON THE STREET CORNER 2が最初でした。

こうして,ムーンレーベル移籍以後の(Melodies以降の)アルバムは,山下達郎自身の手によってCDが作られたのですが,移籍以前の7組のアルバムに関しては,前のレーベルが原盤を所有している関係からか,CDマスタリングの工程にタッチすることができませんでした。

しかしこれらCD化されたRCA/AIR時代のアルバムは山下達郎のコアなファンには不評でした。例えば,CD化されてまもない頃のFOR YOUでは,アナログ盤でいうA面の最後の曲だったFUTARIと,B面の最初の曲だったLOVELAND,ISLANDの曲間が極端に短く,雰囲気も何もあったものではありませんでした。また,有名なところでは,GREATEST HITS!が1990年に再発売された際には,オリジナルと異なる曲順でマスタリングされるなどの問題から裁判沙汰にまで発展しました。

う希望を強く持っていたようですが,なかなかその願いは叶えられませんでした。しかし,裁判も1995年には和解となり,1997年には山下達郎の手によってリマスターされたGREATEST HITS!が発売されるなど,徐々に状況が好転。ようやく今回の7組リマスター再発売にこぎつけたということのようです。

リマスターとは「マスターし直す」ということで,あらためて録音しなおす訳でなく,またミキシングをやり直す(リミックス)訳でもないので,アナログ盤作成時に作られたマスターテープを元にデジタル・マスターを作成し,それを元にCDを作るという作業になります。

実際,音がどう変わったかというと,アルバム再発売に先立ってリリースされたシングルのLOVELAND,ISLANDを聞いてみると,

  • それぞれの楽器の音が,はっきりと聞き分けられるようになった。
  • 低音,特にキックとベースが前に出てきた。
  • といった違いがハッキリと分かるはずです。


    サウンド&レコーディング・マガジン3月号では,RCA/AIR YEARSにちなんだ特集が組まれています。当時から現在まで,ずっと山下達郎のアルバム制作に関わってきたエンジニアの吉田保氏をはじめ,今回のリマスタリング作業に関わった方々のインタビューなども収録されていました。

    全部購入すると,COME ALONGのリマスター盤がもらえる,という特典もあるのですが,なかなか一気に全部購入するのは大変なので,まずは最初のソロ・アルバムCIRCUS TOWNから手をつけてみることにします。

    2002年2月11日

    DVDと本のある生活

    だんだん,Reviewのタイトルがいい加減になってくるような気もしますが,とりあえず今回は最近買ったDVDと本のご紹介です。

    プリティ・ブライド

    原題は"Runaway Bride(逃げる花嫁)"なのですが,プリティ・ウーマンの監督と主演2人という組み合わせで作られた映画ということで,日本向けにこのタイトルにしたようです。従って,プリティ・ウーマンの続編というストーリーでは決してありません。

    まあしかし,プリティー・ウーマンが大好きな人にとっては,この2人の組み合わせはたまりませんね。ただし,ジュリア・ロバーツはそれほど年をとった感じがしませんが,リチャード・ギアはかなり老けた印象を受けます。

    また,プリティー・ウーマンでビバリー・ウィルシャー・ホテルの支配人役を演じたヘクター・エリゾンドも,相変わらずいい味を出しています。ついでにホテルのエレベーターボーイも,ちょい役で登場。

    女王陛下の007

    007シリーズはフレミングの原作も含めて,全て見て(読んで)いますが,この作品が一番好きです。何作にも渡ってボンド役を務めたショーン・コネリー,ロジャー・ムーア,ピアース・ブロスナンの作品よりも,この1作で降板してしまったジョージ・レイゼンビーのボンドに惹かれます。2番目に好きなリビング・デイライツという作品も,たった2作で降板したティモシー・ダルトンの主演というのも不思議です。(こちらはLDを持っています。)

    とにかくこの映画は原作が素晴らしい。公開当時は,ジョージ・レイゼンビーが次の007には出ないとすでに公言していたこともあり,またジェイムズ・ボンド=ショーン・コネリーのイメージを持っていた人が多かったことから,あまり良い評価は受けないでしまいました。

    しかし,この映画は他の007シリーズと比較して,史上最も原作に忠実に作られた作品でありながら,映画ならではの楽しさをピーター・ハント監督が十二分に引き出しているところが,このところの再評価につながっているのではないかと思います。

    スティーブ・ジョブズの再臨

    アップルの創設者の一人にして,パーソナル・コンピュータという概念を現実のものとして最初に世に生み出した現代のカリスマ。様々な言葉で賞賛され,あるいはプライベートや暴君的経営を非難されるスティーブ・ジョブズ。

    この本は,1985年にアップルを追い出されて,1997年に再び暫定CEOにカムバックするまでの,十数年間にジョブズが関わった2つの会社,ネクストとピクサーの没落と繁栄を描きつつ,グッド・ジョブズとバッド・ジョブズの2つの側面をもつ彼の人となりを,彼を取り巻く様々な人々の証言をもって紹介しています。

    とりわけ,金食い虫と言われたピクサーが,ジョブズの資金援助を受けながら地道な試行錯誤を繰り返し,ディズニーと提携して制作したトイストーリーの大成功までのヒストリーは,興味深いものがあります。

    翻訳は,古くからのマックユーザーにはおなじみの大谷和利さん。巻末に,関係者や用語で引ける索引がついているのもなかなかいいと思います。