マックのある生活の第3回は,ホームレコーディングについて。ホームレコーディングって何じゃろう?日本語ではこれを自宅録音,略して宅録などと言います。要するに,家でひとりさみしく曲を作って録音している人や,そのような形態。あるいは,そういった手法で制作された音楽のことを指します。宅録というとどうも暗くオタクな雰囲気がつきまとうので,ホームレコーディングとしてみました。中身は同じです,はい。
そもそも自宅録音を始めたのはいつにさかのぼるかというと,高校生の頃に父がテープ・レコーダーを購入した時がそのきっかけでした。当時のことですから当然オープンリール。で,このテレコは左チャンネルと右チャンネルを別々に録音することができたのです。通常はステレオ録音に使用するのですが,左チャンネルにだけ録音した後,これを再生しながら右チャンネルに別の音を録音するという技がつかえたのです。これを使って,モノラルの伴奏を聞きながらボーカルを録音するなんていう遊びをしていたのでした。
大学生になって,自分でカセットテレコを購入しましたが,カセットではこういう技は使えない訳で,自宅録音ごっことはお別れしてしまいました。
それから10年以上経過した87年。ついに初めてのマルチトラック・レコーダー(略してMTR),FOSTEX160を購入しました。倍速カセットで4トラックのMTRでした。
その後DTMのソフトは,レコンポーザからPerformer,Ballade,EZVisionと変わっていきますが,打ち込みがメインとなってほとんど録音はしなくなり,MTRも売却してしまいました。
とある日。町中を歩いていたら楽器店の店頭にSONYのMD−MTRが置いてありました。従来のカセットに代わってデータMDを記憶媒体に使用するMTRでした。そしてTouch & Buy,要するに衝動買い。しかしたまたまこいつが不良品だった。しかも思ったより使いにくい。そこで新品に変えてもらうついでに,TASCAMという別のメーカーのMD−MTRに差額を支払って買い換えたのです。これがPORTASTUDIO564といいます。
カセットに比べたら断然音は良いし,DTMとのシンクロもトラックをつぶさずにできるし,ピンポン(4つのトラックを2つにまとめて,空いた2トラックにまた録音できるようにすること)もデジタルで音の劣化なくできるし,と非常に満足なしろものでしたが,使えば使うほど,トラックが足りなく思えてくる。それにデータMDという媒体の将来性もいまいち不安。
というわけで99年。いよいよハードディスク・レコーディング(HDR)に移行することになりました。
HDRとは,簡単にいうとハードディスクを記録媒体としたMTR。アナログの音をHDに取り込むため,サウンド・ボードを使います。パソコン内蔵のサウンド・ボードではノイズが乗ってしまい実用的ではないので,HDR向けの高品位なサウンド・ボードを使用します。私が購入したのは,ドイツemagic社のAudiowerk2というサウンド・ボード。これにはMicroLogic AWというHDRソフトも同梱されていて,非常にお買い得なパッケージになっています。カセットやMDのMTRとは段違いの音質,しかも12トラックも使える。念願だった一人アカペラのレコーディングもできて,大満足でした。
唯一,不満だったのは作業途中にWindowsが凍り付いてしまうことがよくあったこと。Windows特有のシステムリソースというやつ,いまだによくわかりませんが,ちょっと重たい作業をさせると,あっという間にいっぱいになって凍り付いてしまうようです。
2001年。1月にサンフランシスコで行われたマックワールド・エクスポで,マック史上初となるCD-RWドライブ内蔵のPowerMac G4が発表されたのを機に,HDRを全面的にマックに移行することにしました。幸いにしてサウンド・ボードのAudiowerk2はG4でもそのまま使えるし,付属のMicroLogic AWはハイブリッド版なので,そのままマックに移行できました。
3月にHDRソフトを付属のMicroLogic AWから,LogicAudio Silverにアップデート。さすがに付録版とは違って,リバーブなどのエフェクトのキメが細かく,ザラついた感じがありません。さらに,録音できるトラック数が12から16に増えました。
HDRをWindowsからマックに移行して一番良かったこと,ずばり安定性が全然違いました。長時間の録音でも全然問題なし。同居人が所属しているブラスバンドの演奏会を録音したDATから取り込む時も,60分以上もだまって黙々と録音をしてくれる。CD−Rに焼く時は最長80分なので,LogicAudioの最長録音時間を80分に設定していますが,やればいくらでも長くできそうな感じです。
録音した音を波形編集した後,マック標準のAIFFというファイル形式に落とし,最後はCDーRに焼きます。CD−Rに焼くには,iTunesを使うのが便利です。AIFFに落としたファイルを,iTunesに読み込ませて曲順や曲間を設定して,CDを焼きます。これが無料でついてくるとは思えない,使いでのあるソフトですね,iTunesって。
場合によっては,AIFFをMP3に変換したり,MDやDATにダビングすることもあります。DATは92年に購入した初代のDATウォークマン(TCD-D3)を何回か修理しながら愛用していましたが,ノイズがひどくなってきたので,据え置き型のDTC-ZE700というDATデッキを使い始めました。MDデッキはMDS-JE630です。
現時点で私が必要とするシステムが,ほとんど揃っています。欲を言えばキリがありませんが,できればデジタル・ミキサーが欲しいですね。あとはLogicAudio上で使えるソフトウエア音源とか。
しかし,本来の目的であるオリジナル曲制作に関しては,なかなか思うようにはいきません。過去に何曲か作ったことはありますが,とても人様に聞かせられるレベルのものではないので,もっぱら好きなアーティストの曲をコピーしたり,バンドの練習用にデモテープを作ったりする程度です。
そんなわけで,HDRが最も活躍しているのは,同居人が所属しているブラスバンドのライブ録音をCDにマスタリングする作業になっています。
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