先日,私の相方が所属する吹奏楽団のコンサートが行われました。コンサートの音はDATに録音されているのですが,これをCD化して希望者に配布したいということで,私にお鉢が回ってきました。
以前,数分程度の短い曲をCDに焼いたことはありましたが,CD2枚に渡る長い録音を手がけるのは初めて。どんなことになりますか。
1.DATの音をハードディスクに取り込む
いわゆるハードディスクレコーディングです。使用したのはAudiowerk2というサウンドボードと,これに付属していたMicroLogic AWというソフト。
DATにテープをセットして,MicroLogicAWを起動し,最初にすることは録音レベルの調整です。デジタル録音では,録音レベルが規定値を超えてしまうとノイズが発生してしまうので,録音レベルの設定はアナログ録音の場合よりも神経を使います。
ライブ録音の場合はさらに,もっとも大きい音ともっとも小さな音との差(ダイナミックレンジ)が広いため,もっとも大きい音にレベルを合わせて録音すると,他の音がすごく低いレベルで録音されてしまいます。
2.コンプでレベル調整
こんな時に便利なのがコンプ(コンプレッサー・リミッター。)
ハードディスクに音を送る前に,このコンプを通してやります。コンプの役割は音を圧縮すること。設定したレベル以上の音のレベルを圧縮して,レベルを下げ,設定したレベル以下の音はそのまま通過させてやることができます。
こうするとピークノイズを出さずに,しかも全体の録音レベルを上げることができるのです。愛用のBEHRINGER MDX2100(ドイツ製)が大活躍してくれました。
3.録音開始
いよいよハードディスクに録音を開始します。本来はマルチトラック録音のためのソフトですが,今回はステレオ録音なので,トラック1だけを使用します。ライブ録音のテープから,前後の拍手も含めて1曲ごとに録音していきます。
4.波形の編集
録音が終わると,サンプルエディタを立ち上げて波形の編集を行います。ここでは,前後の不要な録音部分をカットし,曲が自然につながるようにフェードイン・フェードアウトの設定をします。
5.リバーブを追加
すべての曲の録音と波形編集が終わったら,1曲ごとに1つのWAVファイル(波形ファイル)が出来上がります。このままCD作成ソフトでCDに書き込んでもいいのですが,今回はちょっと手を加えることにしました。
コンサートが行われたホールは,多目的ホールのためかライブ録音にほとんど残響が入っていません。少しは残響があったほうがライブらしい音になるし,ちょっと上手そうに聞こえます。
MicroLogic AWでは,リバーブ(残響)とディレイ(エコー)という2つのエフェクトが使えますので,今回はリバーブを少し追加してやることにしました。
ルームサイズ(部屋の大きさ),ディケイ(減衰)など,5つのパラメータを操作して,ホールらしい残響に設定しました。
ついでにMicroLogic AWのイコライザーを使って,低音部と高音部をほんの少し持ち上げてやりました。ちょっとだけ元気な音になったかな。
6.バウンシング
録音した音にリバーブを追加したものを,新たなWAVファイルに書き出す作業がバウンシングです。しかしここでトラブルに見舞われました。
マニュアルどおりにバウンシングを行って出来上がったWAVファイルを聞いてみると,まったく音がしないのです。何度も確認してやり直しても同じ。どうなっちゃってるの?
そこで早速,MicroLogic AWの国内代理店であるMIDIAにメールを送って質問しました。先週の日曜日のことです。
すると月曜日の午前中にさっそく返事が届きました。それによると「それはMicroLogic AWのバグです。」とのこと。そしてこれを回避する方法も教えてくれました。録音した音とリバーブの送り先をアナログアウトに設定して,デジタルアウトのBounceをクリックすればOKとのこと。
半信半疑でやってみたところ,これがうまく行きました。しかしひどいバグだ。しかもMIDAのホームページのサポートにも掲載されていない。いくらおまけソフトとはいえ,アップデートする予定がないのなら,せめてサポートぐらいちゃんとしてほしい。
7.CDマスタリング
すべての曲のバウンシングが完了し,すべてのWAVファイルができました。容量は全部で979メガバイトもあります。元のデータはもっと大きいので,CD-Rディスク4枚に分けてバックアップしました。
いよいよ最後,CDに書き込むばかりとなりました。
使用するソフトは,Adaptec JapanのEasy CD Creator 4.0です。
Easy CD Creator 4.0のメニューから,音楽CDを選択すると,このような画面になります。左上のエクスプローラ風のウインドウからCDに書き込みたいWAVファイルをドラッグして,右上のウインドウに持ってきます。
次に右上のウインドウからCDに書き込む順番に,下のウインドウにドラッグします。画面の一番下には曲ごとの長さが棒グラフのように表示され,曲の長さやCDの残り時間がひと目で分かるようになっています。
すべての曲を並べ終わったら,CD-RドライブにCD-Rディスクをセットし,「CDの作成」というボタンをクリックすると,CDの書き込みがスタートします。
私の持っているCD-RWドライブは書き込み速度が4倍速なので,実際のCDの長さの4分の1の時間で書き込みができます。最近はもっと早いドライブもありますが,特に不満はありません。
CDの書き込みが完了すると,「CD作成が成功しました」というダイアログが出て,出来上がったCDが取り出されます。
これでおしまい。よっしゃ完パケやぁ。といいたいところですが,そうは問屋が卸さなかった。出来上がったCDをCDプレイヤーで聞いてみたらノイズだらけだったのです。なんで??いまだに理由がわかりません。
結局,WAVファイルをLAN経由でVAIOノートに転送し,VAIOノートで書き込んでみたところ,こちらはうまく行きました。ノイズもまったくないいい音です。
とまあ,様々な試行錯誤のうえ,どうにか音楽CDができました。コンプの使いこなしやイコライジングなど,まだまだ満足できるレベルではありませんが,経験を積み重ねることでノウハウが蓄積されていくんだなあ,と感じました。